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50センチの距離
第22章 ビーフシチュー ポットパイ
二度焼いたパイは少しキツネ色を通り越してたけど、焦げてる程ではなくて。
スプーンでサクサクとパイを崩した。

ホワッと湯気が立ち昇る。
もうそれがいい匂い。
スプーンで掬って食べてみる。…美味しい…‼︎
お腹が空いてる中、コレでもか!てくらいお預けくらって、期待に胸を膨らませて食べたけど、それを全く裏切らない。
パイを浸したシチューは濃厚で、気持ちまで温かくなる。
シチューと一緒にクタクタのパイを食べるとそれはそれで美味しい…何だろ、この幸せな食べもの…
お腹が空いててパイだけじゃ物足りなかったけど、バケットとかシチューに合いそうなパンはなくて。明日の朝食べようと思ってた菓子パンしかない。
仕方なく冷凍ご飯をチンして一緒に食べる。
でも、濃厚なビーフシチューはご飯にも合う。
やっぱ幸せ…食べ終わってしまうのが寂しくなるほど、余韻の残る一食だった…
はぁ…満腹、満足…大満足!
高塚さんの心遣いに感謝だわ〜

コレをわざわざ持ってきてくれたのは…
常連だから?
それとも…私だから…?

過度な期待はしないと決めた。
小さなことで一喜一憂してると消耗するから。

だけど、少しくらいなら。
こんなこと、他の常連にはしてない、よね?
常連客だから、の域を明らかに超えてる気がするのは、気のせいじゃないよね…?
空のカップを見つめ、ひとつ息を吐いた。

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