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50センチの距離
第22章 ビーフシチュー ポットパイ
「別に俺はバカだなんて思わないよ。まぁちょっと若いなぁとは思うけど、成人してるし社会人だし、問題はないだろ。ただ、好きなら好きで一歩踏み込まないと、ただの親切なマスターで終わっちゃう可能性は大だよな。それでお前は我慢できんのかって話だよ。野田さんにオトコが出来て、幸せになるのを指咥えて見てるのか?相手の幸せを願うのが本当の愛だろとかほざくのかよ。とんだ茶番だねぇ…」

「うるせぇ!」

「…怒るってことは図星なんだな。別にお前たちの関係が客と親切なマスターで終わったって俺には関係ないけどさ。友人として、お前にも幸せになってほしいなぁと思うワケよ。エリも心配してるしさぁ…」

「…お前が、俺の立場だったらどうする…?」

「わかんねぇ。俺なら踏み込めないかも。だけど、俺はお前じゃないから無責任に焚き付けてる。」

コウスケはニィーッと笑った。
俺は思わず吹き出す。
腹立つんだけど憎めないってこういうヤツのこと言うんだよな。
けど実際、俺なら告るけどね!なんて無責任に言われたところでそれが出来りゃ世話ねぇわ!ってムカつくだけだろう。
だから、同じ無責任でも、俺なら出来ないと思うけど失敗したって俺は平気だから言っちゃいなよ、みたいな軽いノリのが、憎めないっちゃあ憎めない。てか力が抜けて怒れない…
焼き上がったパイを1つずつ袋に入れ、コウスケに渡した。

「もうコレ持ってさっさと帰れよ!」

「ハイハイ。退散しますよー」

コウスケはヒラヒラと手を振って出て行った。
カララン♪とドアベルが鳴り、店には俺だけが残される。

ひとつ溜息をついた。


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