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50センチの距離
第23章 クリスマスケーキ
「へぇ…でも、初日に所持金ほぼなくなるって…かなりヘビーですよね…」

「うん。もっとちゃんと調べとけば良かったんだろうけど、バカなガキだったからさぁ。おのぼりさん丸出しで持ち金殆どリラに変えてね。」

「リラ?」

「あぁ、今はユーロか。昔はイタリアの通貨はリラって言ったんだよ。コレが1000リレ硬貨。当時で5、60円くらい、だったかな…」

帰るとき、フランカと交換した1000リレ硬貨に、穴を開けて革紐を通し、ネックレスにしていつも首から下げていた。
俺にとってはお守りみたいなもんだ。それを首から外して見せる。
野田さんは、はぁ〜、と溜め息をつき、外国の硬貨ってキレイですよね…と呟いた。確かに100円玉や50円玉に紐通して首から下げようとは思わんな、と考えた。

「見慣れないからかもね。…でもあの時、フランカに声を掛けて貰わなかったら、きっと俺は途方に暮れて、何も出来なかった。持ってるのは帰りのチケット代と、使うつもりなく最後の保険で持ってたバイト代の残り。つまり俺の全財産…取られた旅費は一年かけて稼いだバイト代の半分以上。きっとイタリア自体が嫌いになって、イタリアンのシェフにはなってなかっただろうな。そしたら今何やってんのかな。板前にでもなってるかな?」
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