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50センチの距離
第24章 ローストビーフ丼
「コレビール欲しくなるな…マスター、ビールちょうだい」

「ハイ」

ビアグラスをだしてビールを注ぎ、コトン、とカウンターに置く。
手を伸ばしてビールを取り、クーッと3分の1くらいいっきにながしこんで、

「カーッ!いいね、コレ!美味いわ!いつもやったらいいのに」

「結構手間かかるんでね、毎日は…ま、偶には考えますよ。頻繁にだしたらバーじゃなくて丼メインの一杯飲み屋みたいでしょ。」

「確かに!でもま、オレみたいに飯食いに来てる人間にはそれありがたいんだけどね…」

「一杯飲み屋なら駅前にいくらでもあるでしょう」

「この立地がいいんだよ。会社からも部屋からも近くて。」

「そうなんですか?」

「うん、オレこのマンションだもん。単身赴任にはうってつけのワンルームだよ。」

「そうだったんですね!」

「住んでるトコにこのお店あるなんて!贅沢!」

ローストビーフ丼を食べながら野田さんが大内さんを見る。

「いいだろ?オレもう三食ココって日も多いからね。」

「羨ましい…」

「今多分空きないよ。ま、俺に転勤の辞令が出たらお嬢さんに教えてあげるから引っ越してきたら?」

「ホントですか? 私野田と言います!絶対ですよ!」

野田さんは箸を置き、足元のバッグから名刺を取り出して大内さんに渡した。
大内さんは何年後か分からんけどまぁ気長に待っといてー、と笑って名刺を内ポケットにしまう。

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