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50センチの距離
第25章 缶ビール
意識がなきゃ救急車呼ぶけど、そうでもない人間に救急車を呼ぶのは憚られる。救急車発動の殆どがその必要のない症例で、その為に救急車に乗せるべきヒトの搬送が遅れるのも社会問題になってるし…コレが他の客だったら。俺はたぶん警察に連れていく。救急車呼ぶよりは交番のがまだ…そこまで担いでいくくらいはするし。俺よりデカくなければ、だけど。

そもそも1人で呑みに来て帰れなくなる状態のヒトなんてそういない。人間どっかでセーブするもんだ。誰かと一緒にいるから安心してハメ外す、てことはあるかもだけど…
悩んだ結果、カウンターのハイチェアがバランス悪いから、いつか落ちるかも、と思って、店の鍵を閉め、照明を落として野田さんの脇に頭を差し込む。
お姫様抱っこなんてカッコイイ事できるほど腕力にも腰にも自信ない。肩に担ぐように野田さんを立ち上がらせる。

「た、かつか、さーん…」

ふにゃふにゃと寝言のようにつぶやく。
横にしようにも、店には横になれるようなスペースなんてない。
床に転がしとくわけにもいかない。
仕方なく2階の俺の部屋に運んだ。
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