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50センチの距離
第4章 カシスオレンジ
思わず、カシスオレンジのグラスを持ったままの自分の手を見つめる。

短い爪。
マニキュアくらい塗ろうかな、と思っても、右利きだから右手は上手く塗れないし、乾かしてる間にどっかしら触って跡が付いちゃうし、苦労して塗っても仕事でPCを触るとすぐ剥げてきちゃう。

ジェルネイル、興味はあるけど、仕事上派手な色にはできないし。できてもせいぜいピンクかベージュ。あんまり遊べないから結局行かずじまい。

くたびれたスーツ。

大きなカバンに3センチのローヒールパンプス。

何もかもが、その彼女と正反対に思えて。

少し、切なくなった。

彼女が注文する前に、高塚さんは無言のまま、グラスを彼女の前に置く。

背の高いビールグラスに、茶色っぽい、炭酸の飲み物が入っていて。見た目はコーラみたいだけど、きっとお酒。
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