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50センチの距離
第4章 カシスオレンジ
「さっすがぁ。私の好み、ちゃんと覚えてるんだね、彰。」

ニッコリと笑って、美味しそうにグラスの中身をあおる。
そんな仕草のいちいちがセクシー。

何、呑んでるんだろう。
やっぱ彼女だから注文聞いたりしなくても好きなものよく知ってるんだろうな…

来るなりメニューを広げて、今日は何吞もっかな♪ なんて考えてる自分が、やけに子供じみてる気がしてきた。

2人の世界、て程ではなくて、高塚さんはフツーに他のお客さんとも話してるし、お酒を作ったり料理を作ったりしてる。

彼女は黙って、高塚さんの作ったお酒を呑みながら、高塚さんを観てる。

そんな2人が、落ち着いたオトナのカップルに見えて。
すごく、羨ましかった。

呑むペースの落ちたカシスオレンジの、氷が溶けてカラン、と音がした。
汗をかいたグラスの中身を一気に飲み干す。
いつも甘くて美味しいカシスオレンジが、最後は少し苦く感じた。

私は、お会計を済ませて、足早に店を出た。



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