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50センチの距離
第29章 年越し蕎麦 ーコウスケとの関係ー
コウスケは、新卒の安月給じゃ中々厳しい、と笑って、昼間のランチとかに偶に来てくれて。でも夜も偶に、特に本命の女の子を口説く時とか、ここぞ言う時、にはよく予約して来てた。確かにあの店にスマートに連れて来られたら女の子としては気が利いてると感心されるグレードの店だ。20代前半のオトコが行き慣れてるようなトコじゃない。
けどコウスケは、イタリア語で書かれたメニューを、どれが何の料理でどんな感じか、とか殆どってくらい俺に聞いて、だいたい把握してたし、俺も季節限定のメニューとかが出たら何日からコレ出すぞ〜、なんて情報を流してた。だから、イタリア語がハッキリ読めなくても、字面で何の料理かが解ってれば、女のコの希望と腹の空き具合とかで、じゃあ、て感じで指差しでセレクトして、ワインはこれに合わせてソムリエにお任せで、なんてオーダーしたら、こなれてる感は充分あっただろう。
コウスケは食事以外にも、仕事上がりの俺と飲みに行く為に、俺が早番の日は良く来た。だから、俺と涼子のこともよく知ってる。
涼子は店のホールスタッフで、店的には1年先輩。歳も俺より2つ上。制服の白ブラウスに黒のベスト、黒いロングのタイトスカートにギャルソンエプロン。ベストとブラウスの中に窮屈そうに収まった胸、タイトスカートのスリットから覗く脚のライン、長い髪を仕事の時はひとつにまとめてたけど、仕事終わり、バックに下がった時にその髪留めを外して髪をかきあげる仕草と、弾む髪から漂うシャンプーの香り…大人っぽい雰囲気に俺が憧れて、イイなぁ、あんなオンナと付き合いたいなぁ、なんて安酒呑みながらクダ巻いてたコトも、コウスケだけが知ってる過去だ。
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