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50センチの距離
第30章 雑煮ー元旦の朝 初詣ー
「彰は?お雑煮食べる?」

「みんな待たなくていいの?」

「お兄ちゃんは帰ってきたらシャワー浴びるからあと30分は掛かるし、隆たちはいつ起きてくるか分からないわよ?」

「じゃあ先に食おうかな…オカンも?」

「そうね…食べちゃおうか!」

実家の雑煮は白味噌に丸餅、具は何もない。上に花鰹をパラッとかけるだけ。
この辺は昔からそうらしく、俺はそれで育った。
具材を色々入れるとか、すましだとか味噌だとか、地方によっても違うらしいが、今や別にその土地の風習を守るってこともないだろうし、自分たちが食べたいと思うものを作っていく、お節も雑煮もそれでいいんだろう。

でも何故か、食べ慣れた雑煮を食うと、あぁ、正月だなぁ、なんて実感する…何でかな。

蓋つきの塗りの汁椀が2つ…と思ったら3つある?ひとつはこんなのあったっけ?子供用か?と思うくらい小さい。

「このちっこいの誰の?」

「お父さん。」

「あぁ、仏壇?」

「普段はお茶とお菓子くらいしか供えないけど、お盆とお正月くらいはね。」

あぁ…そうだったっけ…

小振りな塗りの盆にままごとセットみたいな雑煮とお節を少しずつ盛ったの。

「…供えないの?」

「隆たちが寝てるもの。でも、仏様にお供えするのは人が食べる前に、一番最初に取るものよ。」

「ふうん…」

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