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50センチの距離
第30章 雑煮ー元旦の朝 初詣ー
陰膳のように空いた席にミニチュア膳を置き、俺の分の雑煮をよそってくれる。

海山と書かれた祝膳を袋から出し、ちょこちょこ摘んで皿に取る。

「頂きます。」

「はいどうぞ、ってアンタが作ってくれたのが多いのにね。」

「いや、時間と手間が掛かるのはオカンだろ。俺はこういう時間かける仕込みは向かないわ…」

「プロは手早いからね?」

「ソウデスヨ。時間もコストのウチだからね。1人で切り盛りする喫茶店で手間のかかるモンなんか割に合わなくてやってらんないの。」

オカンはそりゃそうね、と笑った。

ずず、と白味噌の雑煮を啜った。
甘い…だけど、不思議と美味い。
普段味噌汁とかって白味噌使わないんだけど…だいたい普通の茶色い味噌(米か豆か知らんけど)か赤出汁。
だけど、不思議と雑煮は白味噌が落ち着く。

「…お母さん、今度彰のお店に行ってみたいなぁ…」

「…何、改まって。食いたいものがあるならココで作るよ?」

「そうじゃなくて、お店の雰囲気とか、お客さんの感じとか、見てみたいのよ」

「…緊張するじゃん。」

「だから変装して行こうかな?」

「怪しいから。ヤメテ…」

笑いながらお節を摘む。
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