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50センチの距離
第30章 雑煮ー元旦の朝 初詣ー
話題を変えよう、と

「オカン、チビどもが起きてくる前に年玉用意しとかなきゃなんだけど、ポチ袋とかある?」

「用意してるわよ。名前だけ書いて。アンタはどうせ新札も持ってないんでしょ?」

「……うん」

はいどうぞ、と渡されたポチ袋には三つ折りにされたキレイな千円札が1枚ずつ入ってた。

「あれ、千円ずつでいいの?」

「高塚家はそうよ?小学校上がるまでは千円、小学校上がったら2千円、4年生になったら3千円、中学校から5千円、で頭打ち。ま、おじいちゃんとおばあちゃんとか高校生になったら1万円くれたりもしたけど、アンタが高校入学した年におじいちゃんなくなったし貰った記憶はないかもね…子供の頃のこと覚えてないの?」

「…いや、年玉貰ったのは覚えてるけどさ、いつ幾ら貰ったかなんて覚えてないよ」

「お兄ちゃんは額までキッチリ覚えてたわよ。」

「兄貴は、ちょっと異常だろ…」

「変に生真面目なトコ、お父さんに似たのよねぇ…まぁお父さんはあそこまで偏屈じゃなかったけど…」

我が子に偏屈って…まぁそうなんだけど… とりあえずポケットに突っ込んだ財布から、新札でも何でもないフツーの千円札を2枚出してオカンに返し、ポチ袋に名前を書いた。
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