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50センチの距離
第32章 カニすき
「タクシー、使えば帰れなくはないんで…」

「ダメよ、そんな夜遅くに、女の子1人で…危ないでしょ?彰、お家まで送ってあげなさい!」

「え?」

高塚さんがギョッとした顔をする。

「それかウチに泊まって貰えば?」

「何処に!部屋も布団も余ってないだろ!」

「…そうねぇ…彰の知り合いだからって彰の部屋ってワケにも行かないわよねぇ…」

「当たり前だよ!」

「彰、お兄ちゃんと一緒に…」

「絶対嫌だ‼︎」

お兄さんが被せ気味に噛み付く。

「いい歳こいてなんで大人の男2人で寝なきゃいけないんだよ⁉︎」

高塚さんもぶるぶるとかぶりを振った。

「あ、あの、ウチ、お布団2組でも、なんとか行けるんで…ひと組お母さんの部屋に敷いて貰えば……」

弟さんの奥さんがおずおずと切り出した。

「そう?じゃ、そうしましょうか?」

「いえ、でも…」

「彰は大阪に帰っても部屋があるんだから、送って行くのでもどっちでもいいのよ?」

「いえ、それも…」

…私…何で綾部に来ちゃったんだろう…
数時間前の自分を殴りたくなった…


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