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50センチの距離
第32章 カニすき
「寒ッ…」

ダウンのファスナーを首元まで上げながら弟さんが白い息を吐く。

「この寒いのにアイスとか…隆くん何考えてんの…」

「だって。野田サン、コンビニ行きたいんだろ。ショウ兄は2人で歩くの気まずそうだったし。」

「あ、私の為…?すみません、なんだか…」

「いやいや。俺がアイス好きなのは事実。」

「隆くん そゆトコあるよね。」

「ん?」

「空気読んで場の雰囲気保つとか。でも、そのスキル嫌いじゃない。」

「惚れ直した?」

「まぁね…」

「いいよ、もっと褒めても。」

「すぐ調子のる!」

あはは、と笑って奥さんが叩くフリをするのをヒラリと避ける。

ふふ。いいご夫婦だな…

「野田さん、化粧品買いに行くの?私のでよかったら本当に使ってくれていいのに…」

「いえ、その…」

奥さんにだけ聞こえるようにコソッと、下着も買いたいので…と言った。

「あー。なるほど。まぁそれも私の予備のあげても良かったけどね…あ、でもサイズ合わないか…野田サンほっそいもんね!」

「そら2人も産んだ三十路の尻と比べちゃあダメだよなー、野田サン!」

あ!今の会話でバレちゃった⁉︎

「うっさい!誰の子よ⁉︎」

「俺!」

親指で自分を指しながらニィッと笑う。
なんて言うか…高塚さんとは全然違う、軽いヒトだな…
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