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50センチの距離
第5章 シャンディガフ(甘口)
俺と涼子のやりとりに、何事かと狭い店内がザワつく。

「すみません、みっともないとこ見せちゃって!お詫びに1杯奢りますんで、なんか呑んで下さい!コレからもご贔屓に!」

と頭を下げざるを得なくて。
ちきしょう、涼子のヤツ。やっぱ万札置いてけばよかったのに。
千円じゃ足りねぇよ。とカウンターの影で溜息をついた。

そんな騒ぎがあってから数日。
普通に野田さんが来てくれて、ちょっとホッとする。
野田さんはあの騒ぎの時、もう帰った後だったんだよな。

いつもはカシスオレンジかサワー系の甘いカクテルを注文する野田さんが、いきなりメニューの写真を指差して、シャンディガフをオーダーしてきたから、ちょっと驚く。

シャンディガフはビールとジンジャーエール、2つの銘柄と割合で結構風味が変えられるカクテルだ。
ウチでは辛口はアンバーのジンジャーエールとスタウトを使ってガツンとパンチのある感じに、甘口はドライジンジャーとピルスナーでガブガブ呑める感じに作ってる。けど、もちろん客の好みによって配合を変えることもある。
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