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50センチの距離
第1章 オムライス
看板には消えかけたような字で、ombrage[オンブラージュ]と書かれている。
通い慣れた喫茶店だ。

ドアを開けると、カランコロン♪と軽やかな音がする。

小洒落たカフェじゃあ、ない。
昔ながらの喫茶店。
冷たい空気と、コーヒーと、煙草のにおいが一気に押し寄せる。

カウンターだけの狭い店内。並んだ椅子は10席。
店内にほかの客はいない。

「いらっしゃい。」

顔も上げず、咥え煙草で言う。
言葉と一緒に煙草が上下に動いた。

ハッキリ言って、無愛想、なこの人は、マスターの高塚さん。

「高塚さん♪」

「ん?」

「今日暑いね〜」

「ぅん…?」

デニムのポケットから携帯を出して操作する。

「…最高気温27℃…夏日だな。」

「出てないのか…」

「んー。こン中は快適だから…もちっとしたら昼の営業終わるから一旦休憩するけど。」



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