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50センチの距離
第42章 アッラ ルチアーナ(タコとトマトのパスタ)
そんな中で妊娠が発覚した時、貯金も稼ぎも然程だった2人は、挙式披露宴をする余裕なんか当然なかった。
隆が住んでたのは会社の独身寮のワンルーム。結婚したら当然出なきゃならないけど、社宅として保有したり契約してる物件はなくて、若干の住宅手当が出るくらい。
クミちゃんは実家暮らしだった。
2人で住む家を探すので手一杯で、結婚式なんて考えもしなかったらしい。
クミちゃんが妊娠して、結婚する、という話はもちろん隆から聞いてたけど、イキナリ俺の職場であるアルジャーノに、隆の友達から電話がかかってきた。

用件は、結婚式を挙げない2人のために、サプライズで結婚パーティーを開きたい、その会場にアルジャーノを使わせて貰えないか、というものだった。
俺が働いてる店だから、融通が利くと思ったのかもしれないが、俺はただの雇われシェフの1人で、そんな決定権、勿論持っちゃいない。もちろん店で貸切パーティーをやる客もいたから出来なくはないだろうけど、家族割引なんてないから安くは出来ないぞ、と念押しして、ダメ元でマネージャーの鷹司さんに聞いてみた。
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