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50センチの距離
第8章 スクリュードライバー
他にフードメニューを注文する客も居たけど、程々のペースだったから、酒を作ったりしながら、何となく2人の会話に聞き耳をたてる。

「このパスタの味…どっかで食べた事ある気がする…」

「…そうなの?すごく美味しいけど…」

「どこだったかな…よく行ったとこなんだよ。すごく、懐かしい味がする…」

過去の記憶を引っ張り出すかのように、明後日の方を見て咀嚼しながら。

「思い出した! アルジャーノだ!神戸の!」

パッと閃いた顔をした村上に、女のコはきょとんとする。

「…有名なとこ?」

「…老舗、かな。昔からある…」

……俺の元職場だよ……

若いくせにあんな店知ってんのか。結構高いぞ、あの店。
職場としては色々勉強させてもらった。けど、社長が引退して、2代目の息子が社長になった時、経営の方針がガラッと変わって、俺含む数人のスタッフは離れた。

まぁ、俺は元々自分で店を構えたかったから、終の住処と思ってた訳でもないし、辞めることに然程抵抗はなかった。
まだ20代だったから、何とかなるだろ、とも思ってたし。
実際何とかなってる。

けど、正直こんな若造に前身を当てられるとは思わなくて。ちょっと驚いた。
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