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50センチの距離
第45章 インスタントコーヒー
一回消えた火を再燃させるには相当の労力が要る、けど、それもできない…
発散出来ずに燻った欲望は、苛立ちにしか変換できなかった…

大人気ないと思いながら、大丈夫だよと振り向いて抱きしめてやることが出来なかった。

チカは、きっと不安で堪らなかったんだろう、泣きそうな声で、震えて俺の背中にしがみつく。ごめんなさい…ごめんなさい…と繰り返した。

頭では大人気ないってわかってる。
だから、そんな必死に謝られると、逆に申し訳なくなってきて。

冷静に考えれば、偶々最中に電話がかかってきただけのことだ。 
日曜日の昼間、親が電話掛けてくる事だって別におかしな事じゃない。
タイミングが悪かっただけだ。  
なのに、拗ねて背中を向けてしまってる自分が、イイ年した大人のクセに情けなさすぎて…

こっちこそごめん…

たったそれだけの言葉を発するのに、かなりの時間を要した。


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