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50センチの距離
第45章 インスタントコーヒー
セックスの後の、心地良い気怠さ。
汗ばんだ身体で抱き合いながら、今までとは違う、くすぐったさを感じる。

「ふふ。」

「何?」

急にチカが笑うから、顔を覗き込んだ。

「彰さん、て呼び方、なんか慣れないけど、嬉しいなぁ、と思って。」

「俺も嬉しい。」

「結婚しよう、て言ってくれたのも、嬉しい。」

「そう?まぁ、あんな覚悟聞かされちゃ、オトコとして腹括るしかないだろ。」

「私ね、子供3人は欲しいの。」

「…頑張んなきゃな。でも何で3人なの。」

イロイロ…いや、作るだけなら全然大丈夫だけど…

「私も、彰さんも、3人兄弟でしょ?それに、ウチの会社、3人目の子供が生まれたら、会社から出産祝金100万出るの。」

「マジで⁉︎」

「社会貢献してる社員への、お祝い。他にも、出産とか、保育に関するシステムがイロイロあるし。保育園とかも、正社員限定で利用できる社内保育所もあるみたい。今は仕事は忙しいし、大変だけど、この先働きながら子育てにも理解ある、ってすごく大事でしょう。で、今の会社に入れたのも、あの日、オンブラージュで、ティーソーダを飲めたからだと思ってる。」

「それは言い過ぎだろ。就職出来たのも、そこで続けてられるのも、全部チカの実力だよ。だけど、そのままそこで頑張れるように、これからも俺が支えて行く。とりあえず、食事は任せろ。」

「鬼に金棒だ!」

「…それちょっと違うんじゃねぇ?」

あはは、と2人で笑った。
幸せ、ってこういうこと、なんだろうな。

「あ、お母さんに電話しなきゃ。」

「じゃ、そろそろ起きて服着るか…」

2人で布団から出て、服を着る。
いつものデートのつもりが、思わぬプロポーズ。
でも、きっと、コレは間違いじゃない。
チカと2人なら、大丈夫だ。






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