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50センチの距離
第46章 ラテアート
この仕分がきっちりしてるレストランは、客が多くても全てがスムーズに流れる。それだけ人件費をかけてるわけだから、料理のコスト自体もそれなりになるワケで。ま、大衆食堂やら安居酒屋、ましてや喫茶店にそんなことを求める客はまぁ居ない。居ないんだけど、ワンオペだからこそ、全ての手順は頭に入ってる。レストランでは分業でやってたことを、勿論規模は全然違うが1人でやる。同時進行でオーダーをこなし、回転させる。そこを乗り切る快感は、レストラン時代にはなかったものだ。
ひと息着く1時過ぎに、チカがやってきた。

「ショウさん。こんにちは」

「いらっしゃい。」

空いた席に座ったチカに水とおしぼりを出す。

「あー、あったかいおしぼり嬉しい…」

指先を温めるように手を拭くチカ。
朝晩は寒いけど、昼間は風がなきゃまだ暖かい日もある。今日は風があったのかな。

「寒かった?」

「うん…思ったより風強くて…」

決まりのように水は出したけど、今は他の客も居ないし、特別サービス。
カップを白湯で温めて捨て、ジンジャーシロップを少し。
白湯を注いでホットジンジャーを出した。

「いいの?」

チカは指先を温めるようにカップを両手で包み、少しずつホットジンジャーを啜る。

「あー…あったまる…」

まるで風呂に入ったみたいに、ほぅ、と息を吐いた。
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