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50センチの距離
第9章 ペスカトーレ
その女性は、こくん、と頷いて。
勝手知ったる感じで、カウンターの中に入って行く。
カウンターの隅に、staff onlyのプレートがかかったドア。
そこが開くのを初めて見た。

階段が続くそのドアがパタンと閉まる。

「…高塚さん、私…今日は、もう、帰ります…」

「え?あ、なんか、ごめんね。」

伝票を高塚さんに渡してお会計を済ます。

「アイスクリームとデザート、きちんと考えるよ。また食べに来て。」

こくん、と頷いて店を出る。
涙が溢れそうになるのを必死に堪えた。

足早に駅まで歩きながら、頰を伝った涙は、堰を切ったように溢れてきて。こんな道端で泣いてるなんてバカみたい…と思いながらも止めることができない。バカみたいじゃない、ホントにバカだ。
独りで舞い上がって…

高塚さんが私みたいなコドモ相手にするわけないじゃん…

高塚さんなんて、優しくて、顔も広そうだし、料理もできて、背も高い。女の人がほっとくわけない…

あーぁ……


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