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50センチの距離
第12章 ティラミス
「…レストランの頃から、里見のティラミスは結構好評だったよ。ドルチェはあんまり種類がないから、他のはよく知らないけど。」

「…でも、このお店、有名ですよね?」

「そうなの?俺はよく知らないんだけど。」

「…ティラミス、食べたことないんで、頂いてもいいですか?」

「どうぞ。皿に置くからちょっと待って。」

高塚さんは、ケーキとコーヒーを出してくれた。

「いただきます!」

「どうぞ。」

フォークでカットしてひと口食べる。
ほろ苦いコーヒーの味と、濃厚なマスカルポーネチーズの風味がたまらん…

「ん〜‼︎ 美味しィ〜‼︎」

フォークを握って振ってしまう。
そんな私を見て、高塚さんが微笑んだ。

「ティラミスの意味、知ってる?」

「え? ティラミスの意味…? 意味なんてあるんですか?」

キョトンとした私に、高塚さんが頷いた。

「“Tira mi su.”(ティ・ラ・ミ・スー)、直訳すると、私を持ち上げる。意味としては、私を元気づけて、て感じかな。落ち込んでても、浮上させてくれるくらい美味しい、って説と、材料のマスカルポーネチーズやら卵黄に、滋養があるからって説もあるんだけどね。」
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