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SMを詰め込んだ短編集
第11章 愛する姉さんへ/SM
「見て」

その部分を見せつけ、指で掬った。
細い糸を引いて、そうしてぷつりと切れた。

「蓮、くん…恥ずかしすぎる」
「どうして。こんなにびしょびしょにしてる鈴、すっごくかわいいよ」

それに、いいにおい。
耳元で囁くと、鈴の体が震えた。

こうやって耳元でえっちなこと言われるの、鈴は大好きだって、ちゃんと知ってる。
ついでに小さな耳もぞろりと舐めた。
鼻から抜けるような声を出して、鳥肌を立てる。
耳介を舐め、小さな穴にも舌を突っ込み、耳朶を甘く噛む。
細い体をこの腕に抱きしめて、髪を撫で、首筋を舐めた。
ほんのりと汗の味がする鈴の首筋に、見覚えのない赤い痕。

「なにこれ」
「あ…それ…」

頭を鈍器で殴られたような衝撃。

鈴に、誰かが触れた。
この首筋に、この真っ白で艶やかな首筋に、汚い痕をつけた。

──鈴が、つけさせた。

腹の底が一気に沸騰したようだった。
怒りで手が震えることなど初めてだった。

「…誰に、付けてもらったの?」

まさか声まで震えるとは思わなかった。
地の底を這うような声って、きっとこんな声だと思った。

「蓮くん!あのね、これは…」
「鈴。俺、すっごく怒ってるよ。無防備だとは思ってたけど、まさかここまでなんて。誰に付けてもらったの?そのキスマーク」
「蓮くん!これはキスマークなんかじゃないよ!よく見てこれ…」
「言い訳なんか聞きたくない。どう見てもキスマークだろ。誰?言って。今すぐころすから」
「お願い落ち着いて!蚊に刺されたんだよ!本当だよ!見てよ噛み痕あるでしょ!あと、背中とこっちの脇腹にもあるよ!お願い…」

あまりにも懇願するから。
俺は鈴のワイシャツのボタンを外して背中のほうを捲り上げた。

なるほど。鈴の言う通り、背中が一か所赤くなっている。
それから、右の脇腹にも。

「…ごめん」

風船の空気が抜けるように怒りが収まった。
鈴も少しほっとした顔を見せた。
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