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SMを詰め込んだ短編集
第12章 ガラスの靴がなくとも/奴隷・純愛
目を覚ますと朝になっていた。
窓の外は鮮麗な朝焼けで、遠くできれいな鳥の声が聞こえた。

意識をゆっくり浮上させ、ああそうだ、昨夜も義兄たちに宙づりにされていたんだと思い出した。
そこがじんじんと痛み、きっと腫れていることだろう。
ばきばきになってしまった体を伸ばし、そっとベッドから降りた。

兄たちは朝早くから森の奥に狩りに出かけているらしい。置手紙がテーブルに残されていた。
窓の外はゆっくりと青色に染まろうとしていた。

ふと、飛び立つ小鳥が視界に入った。

──わたしも外へ、飛び立ちたい…


自分でもなぜそう思ったのかわからない。
だけど、義兄たちがいない今がチャンスだと思った。
逃げるなら今しかないと。
何故、逃げるという言葉が出てきたのかはわからない。
でもとにかく今だと思った。

森の朝は肌寒いというのに上着も着ず、くつも履かずに玄関扉を勢いよく開けた。

朝露に濡れた草道で柔らかくなった皮膚に小石や草で細かな傷が付く。
だけどお構いなく走り続けた。

足が重たくなり、普段走るどころか家の外へは数えるくらいしか出たことがなく、限界はすぐにやってきた。
ひたすら山道を歩いた先に、美しい湖が見えてきた。

急に喉の渇きを覚え、引き寄せられるように湖に近付く。透明度が高く、手を入れると凍えるほど冷たい。手で掬って口へ入れると、汗ばんだ体がすっと冷えていった。

湖畔の岩場に座って美しい湖を眺める。水鳥が数羽遊んでいた。

これからどうしよう…
やっぱり帰らなくちゃダメだよね。
お兄様になんて説明しよう…

日はすっかり登って湖面がきらきらと輝いているのに、気分はどん底だ。
うまい言い訳を考えなければ、どんな酷いことをされるのだろうか。
全身に熱した蝋を掛けられるのだろうか。
乗馬鞭で全身が真っ赤に腫れあがるほど叩かれるのだろうか。
それとも、またお兄様のお友達をたくさん呼んでお相手をさせられるのだろうか。
お腹がはち切れるほどの精液を無理矢理飲まされ、お尻には大きなシリンジで何度も何度も温湯を入れられるのかも。
股縄吊りのまま朝を迎えるのかも。

「鈴を更生させるため」とお兄様にされたことを思い出して身震いする。
どうしよう…どうしたら…
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