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SMを詰め込んだ短編集
第3章 シスターのひみつ/奴隷・SM
「人間って、未だに悪魔は十字架に弱いって思ってるんだってね?そんなのおとぎ話より古い話なのに」
「おまじないみたいなものよ」

私の目の前にとん、と降り立った蓮は、私の首にぶら下がる十字架を手に取った。
風に乗ってふわりと甘い匂いがする。蓮がこんなに近くに来てくれたというだけで私の胸はおとぎ話の少女のように高鳴った。
ふと綺麗な目とかち合って心臓が跳ねる。不敵に笑った蓮が一歩近付いた。ゆるい陽の光を背中に浴び、美しい笑を浮かべるこの悪魔をみていると、本当の悪魔はもしや人間のほうではないのかとさえ勘ぐってしまう。じりじりと距離を詰められて反射的に後退った。元々隅のほうへ座っていたから、あっという間に壁に背中を預けてしまった。

「ふふっ。追い詰めちゃった」
「誰かに見られたら困っちゃうよ」
「誰も来ないよ。それよりも俺はきみとキスがしたい」
「んん!ふっ…んむ!」

制止を無視して蓮の柔らかい唇が重なる。
あっという間に蛇のようにうねる舌が縦横無尽に口内をひとしきり舐め回し、私の逃げる舌を追いかけて吸い上げ、絡めとられて唾液を注がれる。顎を伝う唾液に構わず、尚も舌を絡められ、しがみつく様に蓮の背中に腕を回した。

──キモチイイ…

じゅるじゅると、ちゅぷりといやらしい水音を立てて吸われる舌が、まるで恋人同士が愛を確かめるような甘美で激しいキスが、気持ちいいと教えてくれたのは蓮だった。
悪魔は恐ろしい存在だと、見つけ次第抹消しろと司祭様に口を酸っぱくして教わった。悪魔から市民を守るのが教会の聖職者である、誇りを持ちなさいと何度も教えられてきた。
なのに。

大きくて暖かい手が頭を支え、耳を擽り、腰を撫で、労わるように頬を撫でる。呼吸が苦しくなってくると見計らったように少しだけ唇を離して、それからまた舌を差し込んでくる。

気持ちが良くて膝が崩れる。
おっと、なんて言いながら笑って軽々私を支える逞しい腕にどきりをしたのは、そんなことをしてくれるのは蓮だけだから。こんなふうに私を労わってくれるのは、この悪魔だけ…。
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