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SMを詰め込んだ短編集
第12章 ガラスの靴がなくとも/奴隷・純愛
「お前…笑うとかわいいな」
「へ?」

意味ありげに口角を上げた蓮の唇が再び重なる。
食んでいた唇を割って、生き物のような舌が入ってきた。
口いっぱいに蓮の舌を感じ、上顎から歯列、舌を絡めて、それから軽く吸われて。
鼻から抜ける変な声に恥ずかしくなって蓮にしがみついた。
ソープで滑る体は逞しい腕でしっかりと抱えられ、蓮の高い体温が心地良い。

「腕回せ」

わたしの腕を取って首に回させると、さっきよりずっと体温を直に感じる。
それが嬉しくて気持ちよくて、ぎゅっとしがみつくと、慰めるように蓮の大きな手が背中を往復した。
相変わらず蓮に舌を絡められたまま、背中を撫でていた腕は耳を擽る。反対側の手は、わたしの肌にゆるく爪を立てながら腰をなぞった。

「ふ、あ、っ…!」
「ふ…そんな可愛い顔して。こっちもしてやろう」
「あっ…!」

目が自然ととろりと蕩けてしまう。
目を細めて笑う蓮の体が少しだけ離れ、耳を擽っていた手が胸へと落ちてきた。
泡で滑る指は乳輪をなぞり、乳房を包み、持ち上げるようにして捏ねまわす。
大きな手では余るほどのわたしの胸は簡単に形を変えた。
時々指の腹で上向いた乳首を掠め、それが甘い電流となって腰を震わせる。
こんな感覚は初めてだった。
お兄様に痛めつけられることしか知らなかったここが、こんなになって悦んでる。
それ自体も恥ずかしいが、自分で出しているとは思えない声のほうも恥ずかしい。
手の甲を口に当てて声を遮った。

「聞かせろよ」

ニヒルに笑う蓮によってその手を取られ、指を絡められた。親指で手の甲を撫でられる感触が気持ちいい。

胸で遊んでいた反対側の手が腰に降りて背中に回る。ダンスでもしているような体制にちょっと照れた。
ふと笑う蓮の顔が近づいて、そうしてまた唇が重なる。
ちゅ、ちゅ、と広い浴室に水の音が響いた。

「流すぞ」
「うん…」

唇がくっついたまま喋るから、少し擽ったい。
絡めた指を解いて、ポンプ式のシャワーヘッドを手に持ち、レバーを引く。
ざーっとお湯が流れて、わたしの体を纏っていた泡が流れていった。
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