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SMを詰め込んだ短編集
第14章 敵と味方 奴隷/SM(風味)
目を覚ましたのは、知らないベッドと知らない天井。触ったことすらない蕩けるような感触のブランケット。あたりは静かだった。
「…ここ…?」
ベッドから起き上がる。と、腹の奥がずきりと痛み、思わず蹲った。それに足の間が、経験したことのない痛みを訴えている。背中も痛かったし、肘も固まってしまったようだ。
──ああそうだ。わたしは、ひどいことをされていたんだ…
思い出して体が震えた。ひどい、あまりにもひどいことをされた。
わたしが一体何をしたというんだ。
唇を噛んで、嗚咽を殺した。
父が、国民が、この国が……
「あ、起きたんだ。起き上がって平気なの?」
私の心情とは全く裏腹の、至極穏やかな声だった。ばたん、と控えめな扉の音に、その人がこの部屋に入ってきたと理解した。
「ひどい目にあったね。ここは安全だよ、安心してね。それよりも、本当にひどい。心から詫びるよ…」
鈴は顔を上げなかった。上げられなかった。もう、誰も信用などできないし、したくないと思った。
ベッドの傍までやってきたその人は、見るからに高級そうな、真っ白い生地に金の装飾をあしらった軍服を着た男の人だった。
鈴は、男の人、というだけでトラウマだった。同じ空間にいるだけで苦痛だった。
それでもその人は、蹲って動かなくなった鈴の背中を優しく摩る。
「ごめん。謝って許されることじゃないって分かってる。でも、謝らせてほしい。申し訳ないことをした」
「や…」
「怖かったね、ごめんね」
「触らないで!」
叫んでその手を薙ぎ払った。
目からは涙がぼろぼろ零れ、体はがたがたと震え、奥歯が上手く合わない。
そんな鈴の姿を見て、男は眉を下げた。