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SMを詰め込んだ短編集
第14章 敵と味方 奴隷/SM(風味)
「ここも…」
「あっ…!」

バラ鞭の外し痕だろう。鎖骨や肩や、胸の上についた蚯蚓腫れにも丁寧に塗っていく。それから散々まで嬲られた乳房や乳首にも丹念に軟膏を塗りこんだ。

ぬるぬると滑る軟膏から逃げるように、ちいさな乳首が踊る。それを再び捕まえては、根元から再び丹念に軟膏を塗ってやった。反対側にも軟膏を足し、大きな手で柔らかな乳房を包み込んでやった。

「沁みる?」
「ぴりぴりする…」

乳房や乳首がぴりぴりと染み、徐々に熱を持ち始める。蓮の優しい手つきは、さっきの乱暴が夢であったかのように思えた。

「もうちょっとだから…我慢できるかな」
「うん…」

はあ、はあ、と熱い息を零す鈴の姿に、図らずとも蓮は喉を鳴らした。
だが、ここで襲ってしまえばあの群衆──恥ずかしながら、自国の国民と一緒になってしまう。蓮は、鈴を怖がらせるために軟膏を塗っているわけではない。一度んん、と喉を馴らして自制した。

「今度はこっちだね…背中を見せて」

おずおずと背中を向ける鈴に、蓮は目を見開いた。
バラ鞭を使ったことは分かった。あの群衆の足元に、何本か落ちているのを見たからだ。まさか、一本鞭まで使っているとは予想もしていなかった。
しなやかで細い鈴の背中に、見ているこっちのほうが身を引き裂かれるような、痛々しい痕。そっと肩口にキスをした。

「かわいそうに…怖かったね」
「ひゃっ…」

ちゅ、と思わずキスをしてしまったが、肩ならセーフだろうか…。一瞬蓮は考えたが、鈴は特に嫌がったりはしなかった。

指にたっぷりと取った軟膏を、痛々しい蚯蚓腫れに丁寧に塗りこんでいく。よっぽと沁みるのだろうか、細い肩が震え、シーツを必死に掴んでいる背中が可哀想で仕方がなかった。

「鈴、こっちむいて」
「うん…?」

何とかして気を反らしたかった。蓮は、震える鈴の唇を、そっと塞いでやった。ちゅ、と可愛らしいリップ音を鳴らして、鈴の様子を伺う。さっき肩にキスをしたときと同じく、嫌がってはいないようだった。
それどころか目を潤ませて頬を紅潮させ、そうして縋りたくて仕方ないと訴えるその表情に、蓮のほうが泣きそうになった。
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