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SMを詰め込んだ短編集
第14章 敵と味方 奴隷/SM(風味)
「鈴…大丈夫、俺はひどいことなんてしないからね…」
「うん…」
そう言って後ろからぎゅっと抱きしめてやって、それから再び唇を合わせた。
蓮が王子だからと言って、誰にでもこんなことをしているわけではない。
もう5年も6年も前の話である。蓮は、鈴に恋をしていた。何かのパーティーで鈴を見かけ、一言二言言葉を交わしたことがあった。鶫のような声だと思ったし、控えめながら恥ずかしそうに笑う鈴が、世界で一番かわいいと思った。メイドや執事や、その他従者に対する態度だって、その人を敬って、決して横柄な態度を取らないところも、誰に対しても愛情をもって接するところも好きだと思った。
ただあの頃の蓮は、決して積極的ではなかった。ダンスに誘いたかったが、そんな勇気は持ち合わせていなかった。だから、鈴の姿を、知らない誰かと踊る鈴を、ただ遠くから眺めているだけだった。
この国が攻め入られている。そんな情報が入った時、まさかと思ったのだった。敵は、敵とみなすほどの国でないことは、どの世界から見ても明らかだった。争いはあっけなく終わり、こちらの被害だってほぼゼロだった。しかし、それなりの制裁が必要だった。
鈴が欲しい。
そういったのは、蓮だった。
卑怯だと思ったし、フェアじゃないと思った。それに、敗戦国からやってきた姫君など、誰も歓迎はしないだろうとも思っていた。だけど、チャンスだとも思った。
心密やかにずっとずっと想っていた鈴を、誰よりも幸せにしたい。みんなが鈴を認めてくれるまで、蓮はなんだってやるつもりだった。鈴はこんなに素晴らしくて素敵な女性だと知ってほしかったし、なにより自分が幸せにしたかった。そのためには自分だって強くなくてはいけないと、毎日剣の稽古に励んだ。お陰で手は豆だらけ、体は当初に比べて驚くほど逞しくなった。
本当だったらこんなかたちは蓮だって取りたくなかった。だが、あの国王はいつ何時無謀な争いをしかけるのか分かったものではない。もし蓮の国が鈴以外を要求したとしても、また無謀な争いの末、別の国に対して鈴を寄越したら──
それだけはなんとしてでも避けたかった。これは鈴を守るためでもあった。
のに。
「うん…」
そう言って後ろからぎゅっと抱きしめてやって、それから再び唇を合わせた。
蓮が王子だからと言って、誰にでもこんなことをしているわけではない。
もう5年も6年も前の話である。蓮は、鈴に恋をしていた。何かのパーティーで鈴を見かけ、一言二言言葉を交わしたことがあった。鶫のような声だと思ったし、控えめながら恥ずかしそうに笑う鈴が、世界で一番かわいいと思った。メイドや執事や、その他従者に対する態度だって、その人を敬って、決して横柄な態度を取らないところも、誰に対しても愛情をもって接するところも好きだと思った。
ただあの頃の蓮は、決して積極的ではなかった。ダンスに誘いたかったが、そんな勇気は持ち合わせていなかった。だから、鈴の姿を、知らない誰かと踊る鈴を、ただ遠くから眺めているだけだった。
この国が攻め入られている。そんな情報が入った時、まさかと思ったのだった。敵は、敵とみなすほどの国でないことは、どの世界から見ても明らかだった。争いはあっけなく終わり、こちらの被害だってほぼゼロだった。しかし、それなりの制裁が必要だった。
鈴が欲しい。
そういったのは、蓮だった。
卑怯だと思ったし、フェアじゃないと思った。それに、敗戦国からやってきた姫君など、誰も歓迎はしないだろうとも思っていた。だけど、チャンスだとも思った。
心密やかにずっとずっと想っていた鈴を、誰よりも幸せにしたい。みんなが鈴を認めてくれるまで、蓮はなんだってやるつもりだった。鈴はこんなに素晴らしくて素敵な女性だと知ってほしかったし、なにより自分が幸せにしたかった。そのためには自分だって強くなくてはいけないと、毎日剣の稽古に励んだ。お陰で手は豆だらけ、体は当初に比べて驚くほど逞しくなった。
本当だったらこんなかたちは蓮だって取りたくなかった。だが、あの国王はいつ何時無謀な争いをしかけるのか分かったものではない。もし蓮の国が鈴以外を要求したとしても、また無謀な争いの末、別の国に対して鈴を寄越したら──
それだけはなんとしてでも避けたかった。これは鈴を守るためでもあった。
のに。