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SMを詰め込んだ短編集
第17章 昔の男に貰った指輪してたら勿論彼に怒られた件!/SM
とにかく床に散らかり放題の物を片付け、洗濯機をフル稼働させ、隅から隅まで床ぶきしている最中のこと。
キャビネットの隙間に光るものを見つけた。あたしの部屋に光るようなものあったっけ、なんて思いながら隙間に指を伸ばし、拾い上げた。
「…なにこれ」
キャビネットの間に落ちていたものは、指輪だった。埃を被りすぎてくすみ、何かの装飾が施された部分は黒ずんでいる。石のようなものが見えるが、汚れすぎて色さえ分からなかった。そもそも、指輪なんて買った記憶はない。
首を傾げて水道水で汚れを洗い流したとき、はたと思い出した。学生時代に付き合っていた、元彼から貰った指輪だった。
散々な別れ方だった。悲しくて悔しくてやり切れなくて、それでも諦めきれなくて。怒り任せに薬指から外して、ひとりきりの部屋の中で思い切りぶん投げたのだ。行方は追わなかった。まさかキャビネットの間に落ちていたとは。
「あー…思い出しちゃったなぁ…」
窓から差し込む、傾いたオレンジ色に翳してみる。そういえば、このデザインと石の色が気に入っていたのだった。完全に存在ごと忘れていた。
ふと思い立って、薬指に嵌めてみる。指輪のサイズは変わっていないかとか、こういうデザイン今でも好きだなーとか、売ったら一回分の飲み代くらいにならないかなーとか、そんな下らなくて意特に味の無い理由だ。重複するが、深い意味なんて全くなかった。
だから、玄関チャイムが鳴ったと同時に指に嵌った古い指輪の存在なんか、頭からすっぽり抜け落ちてしまったのだ。
「恭介さん!早かったですね!」
狭い部屋の中をバタバタと走って、壊れんばかりに扉を開ける。数えるのも面倒なほど久しぶりの、それもふたりきりの再会に、あたしは踊りたくなるくらい嬉しかった。
てっきり扉の向こうには、柔らかく笑ってくれる恋人がいるとばかり思っていた。のに。
キャビネットの隙間に光るものを見つけた。あたしの部屋に光るようなものあったっけ、なんて思いながら隙間に指を伸ばし、拾い上げた。
「…なにこれ」
キャビネットの間に落ちていたものは、指輪だった。埃を被りすぎてくすみ、何かの装飾が施された部分は黒ずんでいる。石のようなものが見えるが、汚れすぎて色さえ分からなかった。そもそも、指輪なんて買った記憶はない。
首を傾げて水道水で汚れを洗い流したとき、はたと思い出した。学生時代に付き合っていた、元彼から貰った指輪だった。
散々な別れ方だった。悲しくて悔しくてやり切れなくて、それでも諦めきれなくて。怒り任せに薬指から外して、ひとりきりの部屋の中で思い切りぶん投げたのだ。行方は追わなかった。まさかキャビネットの間に落ちていたとは。
「あー…思い出しちゃったなぁ…」
窓から差し込む、傾いたオレンジ色に翳してみる。そういえば、このデザインと石の色が気に入っていたのだった。完全に存在ごと忘れていた。
ふと思い立って、薬指に嵌めてみる。指輪のサイズは変わっていないかとか、こういうデザイン今でも好きだなーとか、売ったら一回分の飲み代くらいにならないかなーとか、そんな下らなくて意特に味の無い理由だ。重複するが、深い意味なんて全くなかった。
だから、玄関チャイムが鳴ったと同時に指に嵌った古い指輪の存在なんか、頭からすっぽり抜け落ちてしまったのだ。
「恭介さん!早かったですね!」
狭い部屋の中をバタバタと走って、壊れんばかりに扉を開ける。数えるのも面倒なほど久しぶりの、それもふたりきりの再会に、あたしは踊りたくなるくらい嬉しかった。
てっきり扉の向こうには、柔らかく笑ってくれる恋人がいるとばかり思っていた。のに。