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SMを詰め込んだ短編集
第17章 昔の男に貰った指輪してたら勿論彼に怒られた件!/SM
「……なんだこれは」
一瞬、息をするのを忘れた。
彼は、恋人と会う顔をしていなかった。
ヴァイオリンを思い切り叩き壊したみたいな音。そんな揶揄を思い浮かべるような、鋭く冷たい目をした恋人は、たった今壊れんばかりに開けた扉を、文字通り叩き壊す勢いで閉めた。
意味が分からず、あたしは首を傾げる。呑気に、嫌なことでもあったのかな、なんて頓珍漢なことを考えていたくらいには、彼の感情が分からなかった。
「慌てて玄関を開けた理由はこれか?」
「いっ…!?」
ダン、と玄関に鳴り響いた音は、自分が玄関付近の扉に腕ごと縫い付けられたそれだった。気が付いた時にはもう、彼の怒りに燃えた目が、あたしのすぐ鼻の先にあった頃だった。
「あ、の、恭介さん、」
「返信がないからおかしいと思った」
一体何の話をしているのかが分からない。
手加減なしでギリギリと締め上げられる手首が悲鳴を上げる。
「いっ痛いです離して!」
「まずはこれを説明しろ」
顎でしゃくった先を確認したいが、眉間に深く刻まれた皺や、ナイフの切っ先のような視線から目を逸らせず、あたしはただ唇を震わせることしかできない。どんなに多忙だろうとも爪の先まで手入れが行き届いた彼の指が、手首に食い込む音が聞こえた。意味がわからず無言でいると、目の前の恋人の、眉間の皺が深くなる。
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