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SMを詰め込んだ短編集
第17章 昔の男に貰った指輪してたら勿論彼に怒られた件!/SM
「言えないのか」
「あの、なんの話…」
「ふざけるなよ」
腹の底が震えるくらいの、地を這う声。怒り狂う彼の唇は、あたしの震えた唇に思い切り噛み付いた。
「いっ!やっやめっ…」
「今まで誰と何をしていた」
口の中にじわりと広がる鉄の味に、視界が歪む。
そんなことはお構い無しに再び唇に噛み付く彼は、鍛え上げた体であたしを壁に押し付けた。怖くなって必死に顔を背けると、今度は足の間に膝を入れられ、掴まれていた腕を解放されたと同時に、抗う間もなく彼の片手でいとも簡単に両腕が不自由になってしまった。
仕事用のグローブを外した右手が、あたしの顎を乱暴に捕える。
「言え。誰と何をしていた」
「な、なにって…恭介さん怖いですっ…」
呆れるくらい震えた声が、死んでしまったかのように静まる玄関フロアに、ひっそり溶けた。
強制的に合わされる視線は、まるで温度を感じない。怒りに満ち満ちた色は、呼吸をすることすら躊躇うくらいだった。
普段から動きの少ない彼の唇は、どきりとするような赤が伸びる。ああ、あれはあたしの血…。
「誰とも会ってないです、掃除してて…」
本当のことを言ったのに、恭介さんの目は全く緩まず、それどころか背筋が凍るような色を濃くした。ぎりぎりと掴まれたままの腕が、限界を訴える。
「恭介さんほんと痛いっ!」
「では質問を変えよう。何故返信しなかった?」
掴まれた手首がピリピリと痺れ出す。壁と彼に挟まれたままのあたしは、ふと香る髪の香りすら恐怖に思えてしまった。
そうして彼の怒りの矛先である、自分の携帯端末の場所を思い浮かべる。
「返信…?しました、……あれ?してない?」
頭の中で一生懸命朝10時の記憶の記憶を辿るが、色んなことがごちゃごちゃに絡み合って上手く整理できない。ただ、慌ただしく掃除したり合間にお風呂に入ったりと、ひとりで修羅場だったことは確かだ。思い返せば、返信はしていないかもしれない。
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