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SMを詰め込んだ短編集
第17章 昔の男に貰った指輪してたら勿論彼に怒られた件!/SM
「掴まれ」
え、と思う間もなく、濁流がぴたりと止む。息を吸う前に、ふわりと体が浮いた。
「えぇっ!えっ!」
「落ちるぞ」
「まっまって!まって!」
繋がったままひょいと体を持ち上げられ、あろうことか恭介さんはそのままゆっくりと歩き出した。
一歩踏み出す度にずくりと突き上げられるそれは、脳まで一直線に電流が走ったみたいだった。宙ぶらりんの爪先を一生懸命腰に絡めて強すぎる感覚を逃そうとするが、全く無意味だった。それどころか余計に深くまで貫かれてしまって、腹の奥が痙攣し出した。
「やっや!おかしっおかしくなっああ!」
「気に入ったか」
笑う余裕まで見せる彼の首に必死にしがみつく。そうして気がついてしまった。首元まできっちり締めた白いシャツの襟が、汗で湿っていた。
瞬間、ぞくりと腰に電気が走る。怒って、悲しい思いをさせているとばかり思っていたが、彼もちゃんと、気持ちよくなってくれていたんだ、って…。
「おい、そんなに締めるなよ」
くく、と笑う彼の首筋に、すっと一筋の雫が垂れた。突き上げて揺さぶる激しい波とは対照的に、烏の濡れ羽色の髪の毛からは、ふわふわと彼の匂いが舞った。こんなに落ち着くのにこんなにドキドキして、お腹の奥には彼がぎちぎちと割って入ってきて、呼吸が追いつかない。荒い息遣いを耳元で聞いて、あたしの心がきゅっと締まった。
「恭介さんっごめ、なさ…だいすきですっ…!」
かちゃりと扉が開く音がする。ふと目を開けた先に、小さく光る指輪を見つけた。短い廊下の終着点で止まったのだろうその指輪は、あとで捨てよう。
ごみと化した指輪を視線で見送って、今しがみ付いている逞しくて熱い体に、顔を擦りつけた。
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