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SMを詰め込んだ短編集
第17章 昔の男に貰った指輪してたら勿論彼に怒られた件!/SM
「痛むか」
少し赤くなってしまったあたしの手首に、そろりと指を這わせる。ネクタイは案の定というべきか、皺だらけになってしまった。今は冷たいフローリングに落とされている。
「痛くないです」
「声が枯れてしまったな」
さっきまでボタンすら外さなかったのに。ちょっとおかしくなってクスクス笑うと、なんだ、と至極穏やかな声が流れた。ジャケットだけ脱いで横になる恭介さんは、なかなかレアかもしれない。二人分の体重を支えるスプリングが少し可哀想だが、そのことについては何も言わないでおいた。
手首を撫でる彼に、あたしはひっそり声を掛けた。
「ごめんなさい、恭介さん」
「もういい。謝るな」
大切な宝物みたいに扱われることが嬉しくて、引き締まった腰に腕を回す。身長差がありすぎるから、こうやって胸の真ん中に居られるのは、横になった時だけだ。あたしは存分に彼の胸に甘えることにした。
そっと髪に触れる恭介さんの指が、米神から耳へと降りてきた。少しくすぐったくて身を捩ると、その指は耳朶をなぞる。
「ピアスはつけないのか」
空っぽのピアスホールを指の先で撫でながら、低くうっとりと鼓膜を響かせる。
「この前お気に入りを失くしてしまったので、今は付けてないだけです」
「……そうか」
たっぷり時間を使ってから、ため息みたいな返事。
「なにか勘ぐってますか」
「前科があるからな」
「自分で買ったものですよ」
前科と言われると語弊があるが、確かにあれが原因であることに変わりはない。柔らかな空気に、長いため息が混ざる。
「今度プレゼントしよう」
「え、ほんとですか」
「遠慮がないところが、お前のいいところなもな」
くつくつ笑う恭介さんの喉仏が震える。あたしも何だかおかしくなって、こっそり笑った。穏やかでやさしい時間だった。
少し赤くなってしまったあたしの手首に、そろりと指を這わせる。ネクタイは案の定というべきか、皺だらけになってしまった。今は冷たいフローリングに落とされている。
「痛くないです」
「声が枯れてしまったな」
さっきまでボタンすら外さなかったのに。ちょっとおかしくなってクスクス笑うと、なんだ、と至極穏やかな声が流れた。ジャケットだけ脱いで横になる恭介さんは、なかなかレアかもしれない。二人分の体重を支えるスプリングが少し可哀想だが、そのことについては何も言わないでおいた。
手首を撫でる彼に、あたしはひっそり声を掛けた。
「ごめんなさい、恭介さん」
「もういい。謝るな」
大切な宝物みたいに扱われることが嬉しくて、引き締まった腰に腕を回す。身長差がありすぎるから、こうやって胸の真ん中に居られるのは、横になった時だけだ。あたしは存分に彼の胸に甘えることにした。
そっと髪に触れる恭介さんの指が、米神から耳へと降りてきた。少しくすぐったくて身を捩ると、その指は耳朶をなぞる。
「ピアスはつけないのか」
空っぽのピアスホールを指の先で撫でながら、低くうっとりと鼓膜を響かせる。
「この前お気に入りを失くしてしまったので、今は付けてないだけです」
「……そうか」
たっぷり時間を使ってから、ため息みたいな返事。
「なにか勘ぐってますか」
「前科があるからな」
「自分で買ったものですよ」
前科と言われると語弊があるが、確かにあれが原因であることに変わりはない。柔らかな空気に、長いため息が混ざる。
「今度プレゼントしよう」
「え、ほんとですか」
「遠慮がないところが、お前のいいところなもな」
くつくつ笑う恭介さんの喉仏が震える。あたしも何だかおかしくなって、こっそり笑った。穏やかでやさしい時間だった。