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SMを詰め込んだ短編集
第7章 オイシイ ケーキ イカガデスカ /調教
珍しく朝から不機嫌な父。怯える僕ら。天気は晴天。
意味もなく僕を殴りつけ、鈴の服をひん剥いて泣き叫でもお構いなしに、小さなそこにグロテスクなものを無理矢理突っ込んだ。血が出ている──
殴られた頬は痛んで口の中に鉄の味が広がったが、そんなことは構っていられなかった。目の前で実父に犯され、血を流して泣き叫ぶ鈴を黙って見てなどいられない。
目の前が真っ暗になった気がした。

気が付けば僕は血の付いた椅子を持っていた。

「…鈴っ!」

頭から血を流して倒れている父の下敷きになった鈴を引っ張り出す。

「…れん、れんっ…!」

パニックになって泣きじゃくる鈴に下着を穿かせ、抱きしめて頭を撫でた。

「逃げよう、鈴」
「だって、おとうさんは…」
「こんなやつ、親でも何でもないよ!死のうがどうしようが僕らが気に病むことなんかないよ。鈴、一緒に逃げよう」

綺麗な目にいっぱい溜めて、小さく頷いた。
小さな手を握って僕たちは森の奥へと走った。


「蓮っ…待って…!」

もうどれくらい走ったのかわからない。息を切らせて額に汗を浮かばせ、鈴の重い足取りがついに止まってしまった。僕だってお腹がすいて今にも倒れそうだ。くそ、パンの一切れでも持ってくればよかった!

2人とも無言でその場に座り込んだ。遠くで鳥が鳴いている。風が一瞬だけ僕らの間を通り抜けていった。汗ばんだ肌が冷やされて気持ちいい。

「大丈夫?鈴…」
「うん…」

握った手は絶対に離さない。鈴を絶対に守って見せる。たったひとりの、僕の姉。
男女の双子は不吉だと、母は僕たちを恐れて出ていった。父は段々と酒におぼれ、暴力をふるう様になってきた。暴力だけならまだ良かった。僕が鈴の盾になれたから。
鈴が犯されるようになって、僕は盾になれなくなった。何度も立ち向かっていったのに、蚊でも追い払う様に僕を殴りつけた。

「お水…飲みたいね…」

か細い鈴の声が森に溶ける。
うん、と小さく返事をした。そういえば喉もからからだ。
大きく息を吐いてから、あたりを見渡す。今日は野宿を覚悟しなければ。これからどうしよう。今日どこか休めるところ…

「…ねぇ鈴、あれを見て」

僕が指をさすずっと向こうに見たことがない、カラフルな屋根。
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