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SMを詰め込んだ短編集
第7章 オイシイ ケーキ イカガデスカ /調教
「あれはなに?」
「わからない。でも家みたいだね?」
「行ってみる?」
「行ってみよう」
「お水を貰えるといいな」
「そうだね。喉がからからだし、それにお腹がすいてもう限界だよ」
「パンも貰えないかしら」
「そうだったらいいね」
「いいね」
特に何も言わずとも、僕たちは同じタイミングで立ち上がる。握った手は片時も離さない。
変な色の屋根を目指して重たい脚を動かした。
随分歩いた。疲弊し切った僕たちはもう喋る気力もない。
その変な屋根を目の前にする頃、辺りはすっかりオレンジ色に染められていた。
「…へんな家…」
「甘い匂いがするね…」
僕たちの目は遂におかしくなってしまったのだろうか。カラフルな屋根もドアも壁も全て、お菓子で出来ている。二人同時にごくりと喉を鳴らした。
刹那、ばしゃりと水の音。驚いて振り向けば、井戸から水が噴水のように沸き上がっている。
「…お水くらいなら」
「怒られないよね?」
噴水の傍へ引き寄せられるように歩み寄る。手を翳せば雪解け水のように冷たい。軽く手を洗って口へ入れてみると、その美味しいこと!鈴を見れば目を丸くしていた。目を合わせて頷く。それから競う様に夢中で冷たい水を喉に流し込んだ。
息も絶え絶えになるほど夢中で飲んだ水は、僕らが満足する頃には静かに収まって行き、やがて何事もなかったかのように井戸から顔を出さなくなった。
「おや、これはこれは」
聞き慣れない声に驚いて振り向く。立っていたのは実ににこやかな美しい人。長髪ですらりと背が高く、一見すると女性に見えるが、声からするに男性のようだ。
叱られると思った僕は鈴を背中に隠して必死にごめんなさいと謝った。
ところがその人はただ笑うばかり。
「よっぽど喉が渇いていたんだね、お嬢ちゃん、坊ちゃん。俺はそんなことでは怒ったりしないから、顔をあげてごらん…おや、随分可愛らしい。おなかは空いていないかい?ほらどうぞ、中へお入りよ。夜の森はとっても冷えるから」
ゆったりと笑うこの人は僕たちが今切望しているものを宙ぶらりんにされ、喉を鳴らして鈴の安全とそれを天秤にかけた。背中から、蓮、この人のお世話になろうよとか細い声が聞こえた。もう本当に空腹で倒れそうだ。鈴だってきっとそうだ。
「…いいの?」
恐る恐る聞いていると、にっこりと笑みを濃くしてさあ早くお入りと促してくれた。
「わからない。でも家みたいだね?」
「行ってみる?」
「行ってみよう」
「お水を貰えるといいな」
「そうだね。喉がからからだし、それにお腹がすいてもう限界だよ」
「パンも貰えないかしら」
「そうだったらいいね」
「いいね」
特に何も言わずとも、僕たちは同じタイミングで立ち上がる。握った手は片時も離さない。
変な色の屋根を目指して重たい脚を動かした。
随分歩いた。疲弊し切った僕たちはもう喋る気力もない。
その変な屋根を目の前にする頃、辺りはすっかりオレンジ色に染められていた。
「…へんな家…」
「甘い匂いがするね…」
僕たちの目は遂におかしくなってしまったのだろうか。カラフルな屋根もドアも壁も全て、お菓子で出来ている。二人同時にごくりと喉を鳴らした。
刹那、ばしゃりと水の音。驚いて振り向けば、井戸から水が噴水のように沸き上がっている。
「…お水くらいなら」
「怒られないよね?」
噴水の傍へ引き寄せられるように歩み寄る。手を翳せば雪解け水のように冷たい。軽く手を洗って口へ入れてみると、その美味しいこと!鈴を見れば目を丸くしていた。目を合わせて頷く。それから競う様に夢中で冷たい水を喉に流し込んだ。
息も絶え絶えになるほど夢中で飲んだ水は、僕らが満足する頃には静かに収まって行き、やがて何事もなかったかのように井戸から顔を出さなくなった。
「おや、これはこれは」
聞き慣れない声に驚いて振り向く。立っていたのは実ににこやかな美しい人。長髪ですらりと背が高く、一見すると女性に見えるが、声からするに男性のようだ。
叱られると思った僕は鈴を背中に隠して必死にごめんなさいと謝った。
ところがその人はただ笑うばかり。
「よっぽど喉が渇いていたんだね、お嬢ちゃん、坊ちゃん。俺はそんなことでは怒ったりしないから、顔をあげてごらん…おや、随分可愛らしい。おなかは空いていないかい?ほらどうぞ、中へお入りよ。夜の森はとっても冷えるから」
ゆったりと笑うこの人は僕たちが今切望しているものを宙ぶらりんにされ、喉を鳴らして鈴の安全とそれを天秤にかけた。背中から、蓮、この人のお世話になろうよとか細い声が聞こえた。もう本当に空腹で倒れそうだ。鈴だってきっとそうだ。
「…いいの?」
恐る恐る聞いていると、にっこりと笑みを濃くしてさあ早くお入りと促してくれた。