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愛おしいキミに極甘な林檎を
第38章 真実と愛のかたち

でも話を聞くためにソラ先輩を盾にするのはやめて少しだけ前に踏み出した。
「風子……」
すると母だと思われる女の人が私の名前を口にして距離を縮めてくる。
怖くなってこちらが立ち止まってもその人は近付いてきて私を抱きしめた。
「ごめんね……、本当にごめんね……」
「…………」
私を産んだ母がいなくなったのは三歳の頃だったと聞いている。
名前も知らなければ顔も全く覚えていない。
でも抱きしめられてから目を閉じて見ると僅かに懐かしい温もりが伝わってきた。
存在を認めてくれるように優しくて、包んでくれるように温かい……。
今となっては気恥ずかしいけれど、幼かった頃に欲しくてたまらなかった温もりを感じて涙が滲んできた。
強く抱きしめてくれているのに、私は動揺していて母と思われる人の背中に手を回せなかった。
「ずっと…、ずっとあなたに会いたかった……。離れてからも風子のことをずっと思ってた……」

