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愛おしいキミに極甘な林檎を
第39章 キミに告げる愛

断ると課長は微笑んだ顔をして私に向かって歩幅を縮めてくる。
「気にしなくていいんだぞ。乙羽はオレにとって可愛い――部下なんだから」
隣に並んでそう言われた時だけ雨の音が止まった気がした。
まったく都合のいい耳だ。
ここまで気に入られているのなら昇給を期待してしまう。
愛想笑いをして両手の袋を持ち直す仕草をして誤魔化していると、いきなり片手が軽くなった。
「おまたせ、風子。……郁哉さん、こんばんは。また会いましたね」
袋を持たれてから声がした方に視線を向けるとソラ先輩が迎えに来てくれた。
「偶然だな。いやいや、朝はあんなに晴れていたのに雨が降ってくるなんて思わなかった」
「そうですよね。いい天気だって話をしたところだったのに」
男同士の話が始まった。課長のことはソラ先輩にまかせて私は後ろに下がる。
世話話をしているだけなのになんだか面白くて、男の友情を見ているとにやにやしてしまう。
「――――では、オレはそろそろ失礼するな。……あ、乙羽に渡そうと思っていた書類があったのを忘れていた。少し待っていてくれ」

