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愛おしいキミに極甘な林檎を
第53章 あなたがそばにいれば……

婚約を破棄することを求められている事実を目にして胸中がざわついてきてズキンッと痛くなる。
おまけに涙まで浮かび上がってきた。
目の前に迫ってきた厳しい現実が私の思考を鈍らせて冷静さを奪っていく。
じわじわと急激に増えてくる涙は沈黙の時間が続くと共にいつの間にか頬を伝っていて、私は震えた手で口元を覆った。
何も答えられなくて黙っていると、隣に座っているソラ先輩がその小切手を手に取る。
珍しい物をただ見ているだけなのかと思いきや、顔色を変えずに両手でビリッと破いた。
「ははっ、社さん。これは冗談が過ぎますよ。俺の婚約者を泣かせないでください」
「冗談ではありません。塑羅緒様のお爺様から頼まれてしたことです」
「そもそも婚約を破棄する理由がありません。どうしてそこまで俺のすることを気に入ってくれないんですかね」
「理由はしっかりとあります。お二人はこちらの書き込みをご存知でしょうか?」

