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愛おしいキミに極甘な林檎を
第54章 想いと青春の絆

「ひっ……」
私の方に人差し指を向けてきたのは新くんの彼女であって、マンションの玄関で喧嘩を仕掛けてきた女。
しかも大声で言うから、周囲の視線が私の方へ集中した。
「この人、ネットで噂になってるあの書き込みの女なんですよー。有名会社の社長の孫が婚約者なのに、付け上がって他の男に手を出したって言う子です」
多くの人に聞こえるように近くにいる若い女性たちに話して、私の正体を教えようとする。
知らない人からの視線が怖い……。
血の気が引いて立ち尽くしていると、課長に呼ばれている声が聞こえてきてハッとする。
「……乙羽、逃げるぞ」
「はっ、はい……!」
恐怖で体に力が入らないながらも、早歩きで人集りを抜けてその場から離れた。
ショッピングモールから出て後ろを振り返ってみると新くんの彼女が追ってくる気配はないようだった。
「危なかったな……。こちらを見ている人はもういないから大丈夫だ」

