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愛おしいキミに極甘な林檎を
第55章 届かぬ愛の裏切り



廊下にある自販機の周りに誰もいないことを確認してから質問する。


買ったコーヒーを取り出してからこちらを向いた課長に視線を送るとやんわりとした笑みを浮かべてくれた。



「昨晩言ったように乙羽のことは送って行く。昨日のようなことが起きても逃げたりしないから安心してくれ。相手に手も出せないほど弱いがな」


「いいえ。立ち向かえるだけで十分に強いと思います。あの時、課長が一緒にいてくれなかったら私はまた酷い目に遭ってましたから」



「乙羽からそんなことを言われるとは思っていなかった。連休中に一緒に出掛けた時に話したことで恨んでいると思っていたからな」


忘年会の夜に酔った勢いで私を抱いたこと。


それが心に引っ掛かるのはどうやら同じようだ。



「助けてもらったことですし、課長のことを恨んでなんかいませんよ。……憎んで生きれるほど暇じゃありませんから」


「優しいんだな。……乙羽、言い難いが胸の辺りにほこりがついてるぞ」


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