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愛おしいキミに極甘な林檎を
第56章 あなたを愛しているから……

歩き慣れた帰り道を進みながらしかめっ面をして黙ると、困惑したような表情で課長が私の方を見つめてくる。
今晩も刺すような寒さが露出している肌を冷たくする。
手袋をしていない手を温めようとして、はぁっと白くなる息を吹きかけると課長が空いている距離を縮めてきた。
触れてしまいそうなくらい近い距離。
私に触れられないと分かっているからこそ、触れることがいけないことだと思えてドキドキする。
それは背徳感にも似ているような気もした。
「こんばんは。お嬢さん…と課長さん」
人通りが多い道を抜けた時、後ろの方から聞き覚えのある声が聞こえてきてその緊張感が別のものへと切り替わる。
振り向くと火ノ浦さんがいて、課長が透かさず私の前へと出た。
「あんなことがあったのにまだ一緒にいるとは肝が据わってるねぇ。今日も可哀想なカレシは残業だから、これから上司と一緒にご飯とラブホテルにでも行くのかな?」

