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愛おしいキミに極甘な林檎を
第56章 あなたを愛しているから……

「……いいえ。何もいりません」
求めているものは甘い言葉ではない。
だからプロポーズだっていらない。
欲しかった言葉がやってこなかった私は郁哉さんの手を取らずに歩き出した。
好意を無下にしてしまって目に涙が浮かぶほど心苦しいけど、愛している人はひとりだけだから……。
望んでいるその時が来るまで郁哉さんの前で私は私を殺して生きる。
淀んだ雲が晴れるまで、偽らずにいれるのは愛している人の前だけ……。
その晩、この悲しさを紛らわすために久しぶりにソラ先輩と一緒にお風呂に入った。
広い背中を洗っている途中で、触れていた肌に自分の頬をピタッとつけて手を休める。
胸もふにっと潰れていて、先程綺麗に洗ってもらった体に白い泡が再びついてしまった。
「最近の風子は甘えん坊だね。残業が多いから寂しい思いをさせてしまっているかな?」

