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愛おしいキミに極甘な林檎を
第57章 私は愛しい大魔王の小悪魔

気を取り直して緩んでしまった顔を引き締めて郁哉さんの方を見た。
その時に今まで降っていなかった雪がゆっくりと舞い降りてきたことを知った。
人通りが多い場所から離れていることもあって薄暗くて、頼りになるのはオレンジ色の光を放つ街灯の明かりだけ。
近くにバスシェルターがあったから、雪を除けるためにそこへ行こうと郁哉さんに手招きされた。
屋根がついているから雪に触れなくて済む。
停留所にある時刻表を見ると、バスは大分前に通り過ぎていったようだった。
冷たいベンチに座った郁哉さんの隣に腰を下ろし、話の続きを催促するように視線を向けた。
私の思ってることが伝わったのか、郁哉さんは困ったように笑ってから指を組む。
「諦めたくても傍にいるから好きな想いをなかなか消せなかった」
「まあ……、部下ですからいつも一緒ですよね……」

