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愛おしいキミに極甘な林檎を
第58章 初恋の人

急に泣いてしまったことを那砂さんがソラ先輩に話して私の顔に少し緊張が走った。
できれば黙っていて欲しかった。
だけど、那砂さんは過去の私に何があったかなんて知らないから仕方がない……。
隣にいるソラ先輩の顔を窺うてみると、思っていたとおり不安の色が浮かんでいた。
玄関のドアが閉まってから二人きりになると、背中を押されてソファの前まで連れて行かれて座らせられる。
「さっき風子が泣いたって那砂さんが言ってたけど何があったんだい?」
心配そうに私の顔を覗いてくるソラ先輩。台所からカレーの匂いがするから晩御飯を作って待ってくれていたようだった。
嘘をついても結局バレてしまい、隠せないから素直に話すことにした。
「買い物をしてたら昔のことをちょっと思い出したんです」
「何を……?」
「乙羽家に行く前の母と買い物に行ったことです」

