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愛おしいキミに極甘な林檎を
第58章 初恋の人

話すと思い出したことが脳裏に浮かんできてまた涙が滲んできた。
泣いている様子を見せたくなくて少し横を向いて顔を背けると、ソラ先輩はすぐ隣に腰を下ろして私を抱き寄せる。
「体調は大丈夫?……今の記憶は?」
「何年前の話をしているんですか」
「まだ数年しか経ってないだろ」
大学生の頃、過去に傷ついたことを思い出したショックで体調を崩してすべての記憶を失ってしまったことがあった。
一時的なもので済んだけど、目の前にいるソラ先輩でさえ思い出せなかった。
こうならないために大学生の頃に病院に通い、治療を終えて乗り越えた。
それでもソラ先輩は今でも心配なんだろう。
「もう大丈夫ですよ。ただ悲しいこともあったなって思っただけです。……ソラ先輩にもつらい思い出がありますよね?
それを思い出して胸が苦しくなるような感じですから、これは珍しい事ではないと思います」

