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愛おしいキミに極甘な林檎を
第59章 ふたりからひとつへ

もう二度と会えないと思っていたから、今ここで話に出てくるとは全く予想できてなかった。
驚いて固まっているとソラ先輩が背中をぽんっと軽く叩いて私の顔を伺ってくる。
心配しなくてももう悲しい涙は出ない。
その御祝儀に書かれた名前は、乙羽家に養子に行く前に育ててくれていた父のものだった。
「まだ結婚してないのにいいんですか……?」
「もうすぐ入籍するんだから今いただいても変わりないんじゃないかな。……風子ちゃんが幸せになることを心から喜んでいたよ」
「そうですか……」
離れていても前の父の愛を感じて懐かしくなり、目を細めて僅かに笑えた。
大人になってから色んなことを知ったからこそ、その愛も分かる。
過去の複雑な思いは消えないけど今は嬉しいと思えた。
隣にいるソラ先輩を見ると、泣かない私を見て安心したのか微笑みかけてくれる。
「前のお父さんにも祝福してもらえて良かったね」
「はい。とても嬉しいです」

