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愛おしいキミに極甘な林檎を
第60章 夢見ていたシアワセの未来

一瞬何を言い出すのかと思ったけど、どこか吹っ切れたような顔に変わったから黙っていることにした。
「……なんて、今は全く思ってないんだ。寧ろ、風子と結ばれる相手が塑羅緒で良かったと思ってる」
「それはどうも」
「那砂さんと考えた婚姻届作戦は失敗しちまったが、結果的に思いどおりに行って良かった」
「無理矢理くっつけようとしなくても俺は風子を離さないから」
「フッ、やっぱり塑羅緒はそうだろうなと思ってた。もうすぐ入籍するって聞いてホッとしたというか……、なんだろうな……」
言葉を探すように少し考え混んでから、颯太は私とソラ先輩を交互に見た。
「結ばれるおまえらを見てると、……オレも幸せだ」
偽りさえも感じない声で言いながら見せてくれたのは清々しく笑った顔。
こんな風に颯太も笑えることを初めて知った。
人生の僅かな期間だけ好きだった人に幸せを感じてもらえて、今愛している人も隣にいる。
大学時代の私は、こんな贅沢な幸せが待っていることを想像できていなかったと思う。

