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愛おしいキミに極甘な林檎を
第62章 愛おしいあなたに……

「ううっ……。こんなの……、ずるいですよ……」
この光景を見ていたいのに目の前が涙でいっぱいになっていってぼやけて見える。
丁寧に鍵盤に触れて奏でる優しい音色から伝わってくる温かな愛情はどんな形であっても変わらない。
曲が終わるまで貸してもらったハンカチでボロボロと流れてくる涙を拭って心に刻むように聞いていた。
「風子、誕生日おめでとう」
ピアノの演奏を終えたソラ先輩が椅子から立ち上がり、海田先輩が向けたマイクに向かってそう言ってくれた。
「っ……、……ありがとうございます」
私もこの幸せな気持ちを現わせるような笑顔でお礼を言って皆の方へ会釈をする。
鳴り止まない拍手の中、ソラ先輩が私に伝えたかったもう一つの言葉が確かに聞こえた。

