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愛おしいキミに極甘な林檎を
第63章 愛おしいキミに……

名前をぼそりと呟いて寂しそうに目を細めた理人さん。
写真に写っている姿はどれも笑顔で、その特別な瞬間を心から楽しんでいることがパッと見て分かるくらいだった。
その笑顔を一枚一枚確かめるように理人さんは目を通していった。
「那砂的には悔しいけど、理人くんも風子ちゃんのことを女として大好きだったわよねぇ。同居していた時、いつでもヤれたのにヤらなかったのも愛があったからって分かるわよ」
並ばれている写真を手に取った那砂さんは、過去を認めるような温かい声のトーンでそう言った。
静かな時間が少し流れてから理人さんはビールを嗜む程度にごくりと飲み、おつまみを一口食べる。
「……今となっては懐かしい思い出ですよ」
「今も愛してるくせに」
「“兄”として、ですよ。風子さんのことは大切な家族としてずっと愛しています」
「家族を大切にするのは理人くんらしいわね。ちびっ子たちにもこの写真を見せてあげなさいよ。お姉ちゃんの最後の晴れ姿なんだから」

